#異常気象 に関する会話:ジャカルタの洪水
あらまし
2020年1月、インドネシアの首都ジャカルタを記録的な豪雨が襲い、インフラの許容限度を超える雨が降りました。首都のかなりの部分が猛烈な洪水に巻き込まれ、被害の規模は負傷者数十人、避難者数千人に達しました。水位の上昇に伴い、交通網の麻ひ、空港の閉鎖、停電といった問題が発生し、数百万人の住人がXに集まり最新情報を共有し続けました。2020年1月第1週に、洪水に関するジャカルタ発のツイートは2万件を突破しました。
以下では、Peta Bencanaが開発した災害情報のリアルタイム共有システムから得られるインサイトを参考にしながら、こうした会話を通じて実際に何が起きていたのかをじっくり探ります。
ジャカルタの洪水の実態
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詳細
多数のエリアが海抜より低い氾濫原にあり、7つの河川が三角州を形成する独自の地形は、以前からジャカルタを洪水の被害を受けやすい都市にしてきました。そのためPeta Bencanaの活動家と主催者は、記録的な豪雨が降り始めた時点で、ジャカルタのどの区域が最初に、または最も影響を受けるかをリアルタイムで把握するうえで、プラットフォームが不可欠な役割を果たすと認識していました。
「既存のツイート行為に対応することで、プロジェクトを非常にスムーズに進行できました」と非営利組織Peta BencanaディレクターのNashin Mahtani氏は語ります。同組織は南アジアと東南アジアで緊急対応と災害管理用の透明なプラットフォームを無料で提供しています。「ユーザーは、驚くべき頻度で洪水についてツイートしていました。 課題となったのは、こうしたデータを安全に匿名かつ有益な形で収集、構造化する方法でした。利用可能なデータはすでに豊富にあり、こうしたデータを災害管理インフラの重要な側面として利用する必要がありました」
起きた出来事についてのパブリックツイートをすばやくクラウドソーシングするために、Peta BencanaはCogniCityと呼ばれるオープンソースのソフトウェアを使用してXの「人道的ボット」を開発しました。このボットは洪水と災害関連のキーワード(例えば、インドネシア語で洪水を意味する「banjir」)を含むインドネシア国内ユーザーからの@PetaBencanaアカウント宛てのツイートに耳を傾け、ユーザーが見たことを共有する方法を指示するツイートを自動返信します。
自動返信では、洪水のインシデントを確認するために、洪水の重大度、インフラの障害、対応策を報告する簡単な4つのステップからなる調査への回答の送信を利用者に求めます。このように住人と直接やりとりすることで、Peta Bencanaは数百万件のツイートをフィルタリングして、さまざまな区域にいる利用者から、確認済みかつ構造化されたレポートを直接収集しました。コストと時間のかかるデータ処理の必要はありません。データ収集フレームワークを使用し、Peta Bencanaは、浸水レベルとリスクのリアルタイムのマップを作成して、ユーザーや緊急隊がすぐに無料で使えるようにしました。
洪水のピーク時にはPeta Bencanaが提供した洪水マップへのアクセス数は25万9,000回を突破し、1週間のアクティビティ数の増加率は24,000%にも達しました。住人はこのマップで洪水の状況を把握し、氾濫しているエリアを避け、安全な対応をとるための決断を下しました。
ジャカルタの地域災害管理庁(BPBD DKI Jakarta)もこのマップをモニターし、報告された重大度と要求に基づき住人のニーズに対処し、救援対応の調整を図りました。水位の低下と救援の到着に合わせて、Peta Bencanaは洪水被害を受けた近隣の情報を更新し続けました。
将来を見据えて
Xは自然災害時における強力なコミュニケーション手段として、重要な情報や支援を得るだけでなく、将来への備えを改善する方法を把握するのにも役立ちます。世界人口の約60%が暮らすアジア太平洋地域は気候変動による異常気象に最もさらされやすい地域でもあります(CNN、2019年)。
「インドネシアとフィリピンは災害管理に関して共通点が多数あります。いずれの国も危機にさらされるリスクが高く、恐らくそのために助け合い精神(インドネシア語で「gotong royong」、フィリピン語で「bayanihan」)が文化に深く根付いています。ソーシャルメディア利用率がきわめて高い点も両国に共通しています」
こうした弱点克服を支援するため、Peta Bencanaは南アジア・東南アジア全体で取り組みを拡大する計画です。2020年10月から11月にかけてフィリピンは5つの台風に相次いで見舞われましたが、PetaBencana.idのパイロット版プラットフォームはそれに先立つ9月にすでに稼働を開始していました。コミュニティ主導の災害リスクを削減する情報共有の有効性がパイロットプロジェクトの早い段階で実証されたことを受け、Mahanti氏と同氏が率いるチームは、現在、台風シーズンが到来する前に、プラットフォームを全国版に拡張する取り組みを続けています。こうした取り組みをさらにサポートするため、Peta BencanaはX開発者プラットフォームとの提携プロジェクト「#DataForGood」を2021年初頭に立ち上げました。
Peta Bencanaは、ウーロンゴン大学とBPBD DKI Jakartaの共同研究プロジェクトとして2013年に開始されました。現在は、オープンソース技術とXのAPIを活用して地元の人道的対応タスクをサポートするフル機能プラットフォームに進化しています。 ご興味がある方は、こちらで詳細をご覧ください。
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Peta Bencana提供のデータインサイト
PetaBencana.idはYayasan Peta Bencanaが運営する、南アジア・東南アジアにおける緊急対応と災害管理用の透過的な無料プラットフォームです。PetaBencana.idは米国国際開発庁(USAID)の災害リスク管理プログラムにおける次世代のコミュニティーエンゲージメントのCogniCity Open Source Softwareに強力しています。 各ビジュアルはNTTデータ、Sprout Social、Brandwatch、Peta Bencanaの多大なる協力を得て作成されています。
Design I/O提供のビジュアル作品
2020年National Design Awardでデジタルデザイン部門の受賞者となったDesign I/Oは、最先端の没入型・双方向式の実験的なデータ可視化と新たな形態のストーリーテリングのデザイン、開発を専門にするクリエイティブスタジオです。詳細は、Design I/Oを参照してください。